辺見 庸 『もの食う人びと 』 角川書店
飽食の日本を飛び出して、アジア、アフリカ、ヨーロッパと各地で「食べた」著者のルポルタージュ。食べるということは、誰でも毎日していることなのだけれど、その当たり前の行為に、その土地の歴史、文化、政治、生活、さまざまなものが内包されて、深いです。

日本を抜け出して、著者が最初に食べたものは、ダッカの残飯。ホテルの残飯が貧しい人たちに食事として売られているのです。線香の煙で匂いをごまかして。食べた後、著者は残飯であったことを知って、口にすっぱい液があふれて、唾液を吐き出します。

この本は90年代の記録なのですけれど、今はどうなのでしょう。今でもダッカではホテルの残飯が売られているのでしょうか。そして、以前読んだ『日本の下層社会』を思い出しました。日本でも戦前は、残飯が「下層社会」の人々に売られていて、残飯を食べて生活している人がいたのでした。今の日本では残飯が人の食事として売られていないけど、売られていることを驚くことができるけれど……

他に、チェルノブイリの汚染地帯、サハリンの蕗、タイの猫缶工場、エトセトラ。あるいはポーランドの元政治家のインタビュー。共通項は食というだけで、本当に千差万別。身近なのに身近ではないことが書かれているのが、面白い理由なのだろうなぁと思いました。そして、私の「食」ははたしてどうなっているのだろう、とふと考えさせられました。
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by alcyon_sea | 2007-09-09 21:44 | ノンフィクション
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