齋藤孝 『読書力』 岩波書店
岩波は「教養」の発信基地。昔から機関紙「並」じゃなかった、「波」で「教養」を発信している。遺憾なことに、最近教養の価値が低下し、先細り傾向にある、らしい。教養の退潮(&岩波の退潮)を案じて出したと思われる1冊。

作者が言う読書とは、推理小説や娯楽本は含めず、精神の緊張を伴う読書のことをいうらしい。確かにそういった読書も大切だと思うし、本を読むことで、実際には体験できないことを体験できるし、考えることもできる、のだとは思います。そういったことが大切だというのも同意です。

でもね、読書力を上げると日本経済の復興もなると最初のほうで作者はおっしゃいますが、いかがなものかしら。バブル経済崩壊の時、経済界のTOPにいらした方々は教養主義がいまだ、廃れていないころ、つまり学生が今より本を読んだと思われる時に、学生時代をすごしたのだと思います。古くは大正教養主義も昭和のファシズムに対してなすことをしらなかったわけですし。読書とは、そのようにわかりやすく役に立つものなのかしら。それに、要約力・会話力・コメント力がついて、社会で有用なのだそうだけれど、作者自ら本をたくさん読む人間は孤独になりやすいといっているので、コミュニケーション力も本当のところどうなのだろうと、あやしく思ったり…。

ちなみに、作者の言う読書力がある目安とは、文庫100冊、新書50冊だそうです。もちろん、推理小説や娯楽本を除く。司馬遼太郎あたりが境目だそうです。精神の緊張という言葉から、日本に古くからあるなんとか道系の求道精神を感じます。そして、明確な数値目標と手順を踏めばステップアップできるらしい、明快さ。やっぱり何とか道系っぽいです。読書道という新たな道ができたのかも。

と、色々書きましたが、推薦の文庫100冊はネットで公開されてます。私はたくさん読んでない本がありました。(30冊強しか読んでない)読もう読もうと思ってなかなか読まなかった本も多い…。山本周五郎とか、マックス・ウェーバーとか。読書が役に立つ立たないは別にして、次は何を読もうかと思ったときに、結構参考になるかも、と思いました。(←リストに須賀敦子が入っていたので、満足&納得したらしい)

ところで、この本は新書50冊のなかに入るんですかね?字が大きい、やたらに読みやすく明快な論旨、この本のおかげで確かに教養の退潮を実感しましたが。
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by alcyon_sea | 2007-02-27 22:25 | ノンフィクション
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