佐藤賢一 『王妃の離婚』 集英社
直木賞受賞作品、に納得。面白かったです。この作者らしく、中世フランスの親族法や裁判の様子も詳しくて、楽しかったです。カルチェラタンの活気は、以前読んだ同じ作者の『カルチェラタン』を思い出しました。

内容
舞台は1498年フランス。国王ルイ12世は王妃ジャンヌに対して離婚裁判を起こします。裁判で、王は王妃に身体的欠陥があって普通の結婚生活ができないから別れるのだと主張しています。

しかし、これは建前で王妃は前王の娘。前王は死んだし、べつに美人ではなし、気が合うわけでなし、早く別れてもっと領地をいっぱい持っているお金持ちの後家さんと結婚したいというのが王の本音。有力な味方のいない王妃は、孤立無援の戦いを強いられています。そんな王妃の弁護に立ち上がったのが、かつてパリ大学で秀才の誉れ高かったフランソワ。わけあって今は、しがない田舎弁護士です。

裁判が進むにつれて、フランソワの過去が明らかになっていきます。フランソワが都落ちした原因は、王妃の父である前王にありました。前の王様も結婚問題でいろいろやってしまっていて、フランソワはそれとは知らずにつきとめてしまったために、王の怒りを買って都落ちする羽目になったのでした。



いわば敵の娘の弁護をするフランソワ。さらにフランソワの過去の女性や、その女性の弟とのいざこざも登場してきます。中世フランスにふさわしく、アベラールとエロイーズの物語が下敷きになっていました。

アベラール、昔読んだ子供向けの本では自分の信条を貫いて挫折した信念の人のイメージだったのですが、この本だと結構情けないダメ男でした。これは、女性の親族にやられても、同情はできないというか、いやそれでも気の毒ではあるのだけれど(ごにょごにょ)ちょっと見方が変わりました。

離婚裁判の闘いの物語であると同時に、フランソワや王妃の過去との和解の物語でもありました。舞台は中世ではあるけれど、過去との葛藤やもつれた男女の感情は現代にも通じるところがあり、特殊性と普遍性がいい感じで混在している気がしました。それに最後の終わり方がとてもさわやかで、良かったです。
……現実にはなかなかこう綺麗にはいかないと思いますがね。(ぼそっ)
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by alcyon_sea | 2007-04-25 20:56 | 小説
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